ネロ式ブースの効果考察
 
近年塗装ブースの自作ブームの先駆けとなった、ガットワークスさんが開発した「ネロブース」という形状のブースがあります。
(「ネロ」「ネロブース」「ネロ式」などと言われていますが、こちらでは「ネロ式」とさせていただきます。)
これはいままで排気口に直接吸い込ませていた、「タミヤ ツインファン」とは違い
ドラフトチャンバーを元に中央に仕切り板を設け上下から吸い込む形状となっているのが大きな特徴です。
その形状の作りやすさ吸引力、吹き替えし対策などから自作塗装ブースを作る際採用される形です。
 
図1. ブース上に排気装置を設置したネロ式ブース

 
 
ここからは私がネロ式を考察した内容となります。
(専門家ではないので誤りがあるかもしれません。)
 
・気流の流れについて
 
1. エアブラシによる気流仕切り板に当たり上下方向へ分離する。
上方への流れはミストが少ない軽い気流、
下方への流れはミストが多い重い気流に分離される。
 
2. 上方気流について
跳ね返り防止板によりa.の位置で気流が滞留する。
滞留した気流を排気装置によっておきる流れで吸い込む。
 
3. 下方気流について
ハニカムフィルターにより逆流を押しとどめb.の位置へ滞留させる。
同じく滞留した気流を排気装置によっておきる流れで吸い込む。
 
 
・ネロ式でのサイズ・素材について
 
塗装ブース総合スレッド23」での情報では、ネロブースは上方開口部4cm・下方開口部5cmだそうです。
またネロ式で自作されている方も4~5cmで作成されているようです。
(ネロブースの上下でサイズが違うのは上方排気による排気口までの距離の差を考えてかもしれません。)
 
ブースの素材としては、MDFボード(9mm厚)で作成されている方が多いように見受けれれます。
(910mm x 1810mm で\2,500~とコストパフォーマンスが良いのと加工のしやすさからだと推測されます。)
また本番作成前に段ボールで実験する方もいますが(利口な方法だと思います。)、換気装置の重さや吸引の関係でたわむ可能性があるので
最終的には強度がある素材を選んだほうが良いでしょう。
 
幅・高さは後記「排気装置の選定基準」に影響される部分ではありますが、基本は前記「ブース選定方法」によるサイズとなります。
あとブース自体の奥行は仕切り板を最大45度と考え、基本高さと同じかそれ以下のサイズとなります。
高さ50cmで仕切り板が45度の場合、奥行きも50cm。(仕切り板を10度ぐらいにし収納性を高めた方もいらっしゃいます。)
仕切り板を立てた場合、ネロ式の利点が薄まるので45~30度ぐらいで設置し上下吸入口に5cmの余裕があるサイズが良いかと思います。
 
排気装置c.に近い位置に設置するようにして下さい。
上方・下方にある吸入口とできるだけ等距離とする為です。
 
図2. ブースのサイズ計算

 
ブース自体作成に自信のない方は、費用がかかりますがオーダーメイドで箱を作成してくれる所に相談するのも一つの手段です。
例:「キバコヤ」「F-RAISE」「ミヤカグ」「有限会社ライジングステンレス」等
職人さんが作るわけなので精度等は自分で作るより上でしょうし、何より組みあがった状態で届くので楽です。
あとホームセンターでは部材のカットはお願いできますが、穴あけ用ドリル(ホールソー)や圧着治具(クランプ)など追加で道具を購入するぐらいなら、
その分を工賃として依頼分に含ますことができます。
また価格は判りませんが、ステンレス製などの金属で作成することも可能です。
 
 
・ネロ式の利点
 
大部分はミストが含まれた重い気流ですので、不要な塗料を仕切り板の斜めを使い奥下方位置へ移動させる。
これにより塗料の跳ね返り防止や、たまった状態での落下を防ぐ。
(下方吸引に近い効果を得られる。)
 
上方吸引があるおかげでミストが少ない軽い気流も落下する前に吸引することができ
塗料の跳ね返り防止の効果が見込める。
 
排気装置がファン式の場合、排気装置からの逆流現象が起きやすいが
吸引と跳ね返り防止板ハニカムフィルターにより防ぐことができる。
 
ブースサイズのギリギリまで大きな排気装置を設置することが可能。
上方や背面、使用する排気装置にもよるが左右の設置も可能。
(下方吸引の場合、ネロ式にするメリットが少ない。)
 
 
・ネロ式の欠点
 
ブースと排気装置を用意する関係上どうしても占有スペースが大きくなってしまう。
 
ブース内に仕切り板を設置する関係上、使用できる内部スペースが限られる。
 
ブース自体の作成で段ボールや薄いプラスチック段ボールなどを使用し上方排気型で換気扇を設置すると重さでたわんでしまう。
同じく排気能力が高い場合、吸引力でたわんでしまう事がある。
 
以上を考慮し
「やはりネロ式で塗装ブースを作りたい」と思った方は
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