排気装置の選定基準 1
 
前回までに、自作塗装ブースをネロ式で作成する事が決まっていると思います。
設置場所、排気ダクトの取り回し、ブースの素材などが決まれば基本的な部品の予算が算出できます。
予算の残りが排気装置の価格となってきます。
 
排気装置の種類について
 
排気装置も様々な種類がありますので、利点・欠点を踏まえ紹介します。
 
 
天井取付型(シロッコファン)
 
ネロ式でブースを作成する時の定番商品。
シロッコファン(筒型)が特徴で吸入口と排出口のサイズを自由に設計できる為、静音高性能のモデルが多い。
国内メーカは吸入口(シロッコファンが入る筒部分)がφ140、φ150、φ160の製品が多い。
排出口は低性能でφ100、風量300m³/hを超える場合φ150となる。
 
・利点
掃除が楽な製品が多い。
構造上モータに吸排気の流れが当たらず安全性が保てる。
安心の国内メーカ製で選択の幅が広い。
一部の機種は外側が外せカタツムリ型のシロッコファン本体だけにできるそうです。
その場合、小スペースと軽量化が見込めます。
 
・欠点
構造上ファン内側にミストをたたきつける形なのでファン内で塗料が乾燥し粉となって残る事がある。
どうしても奥行サイズが大きくなる。
シロッコファンの素材によっては溶剤による影響があるかもしれません。(シロッコファンだけ部品購入することは可能。)
 
 
ダクトファン(プロペラファン)
 
筒の中にプロペラファンとモータを仕込んだ形状。
基本利用はその名の通りダクトに風を流す為、吸入口・排出口のサイズが同じである。
 
・利点
粉じんの吸引などで使われる事を想定したモデルもあるので、ある程度の安全性は保てる。
基本サイズが小さい。(φ150 366m³/hのモデルもある)その為ブース内に設置できる場合がある。
 
・欠点
小さいφで風量を稼ごうとするので、音が基本大きい。
音質としては風切音が大きく「ゴー」とした音が強くします。
商品の選択幅が狭い。(国内メーカ品だと価格が高すぎる)
 
 
壁取付型(プロペラファン)
 
一般家庭の台所で使われているプロペラファン。
 
・利点
安心の国内メーカ製で選択の幅が広い。
価格は安め。
 
・欠点
製品の仕様上、吸入口・排出口の幅が広くダクトを繋ぐのが難しい。
奥行は小さいが、幅高さは大きくダクトを繋ぐ際φが小さくなる為、結果風量が減ってしまう。
排気ダクトφを小さくすることにより、吹き替えしが発生しやすくなる。
プロペラファンの素材によっては溶剤による影響があるかもしれません。(部品購入することは可能だが買い替えたほうがお得。)
 
 
PCファン(プロペラファン)
 
PCを冷却するためのプロペラファン、ファン自体にモータが組み込まれている。
こちらの「ファン&ブロア」が参考になります。
 
・利点
全体的に小さいモデルが多い。
種類が豊富。
大きく分けてACファン(交流)、DCファン(直流)に判れる。
DCファンの場合、速度可変ユニット(\1,000程度)を組み込める。
奥行が基本小さいのでモデルによっては、ブース内に設置できる。
 
・欠点
基本用途がPC用の為、可燃性や粉じんの考慮は基本なし。(対策されているモデル[IPX5および、IP5X以上]もあり)
通常PC使用で3年程度(70000時間程度)持つが、塗装ブースのような過酷な状況下ではどれぐらい持つかは不明。
主な懸念点はプロペラファンの素材によっては溶剤による影響があるかもしれない事。
その為に掃除を行いたいが分解できない為ほとんど行う事ができない。(ごく一部の製品では簡単に取り外し可能。)
よってファンへのダメージで軸周りが故障する可能性がある。
またDCファンに繋げる電源回路によっては、通常のPC使用でも半年で故障する。(電食現象)
小型化されているので動作時高回転に設定されている製品が多い。
音質としてはモータ音が大きく「キーン」とした高音が強くします。
別途ACアダプタなどが必要となる(DCファンの場合)。
ある程度の知識が必要となる。(単体でみれば部品の分類)
ダクトを繋げる想定ではないので別途ダクトコネクター等が必要。
 
 
その他 ファン、ブロワ、コンプレッサ
 
10kPa、100kPaを境に「分類」が細かく規定されているそうです。
(ファン < ブロワ < コンプレッサの順)
ファンの形状も様々で各自特徴があり、よく見られるのは
「ゴミなどを吹き飛ばす(吸い込む)」「トンネルの工事現場などで酸素を送る」「排熱・換気」用途でしょう。
厳密には上記で紹介した製品も含まれてしまいますが、ここでは「その他の製品」とお考えください。
 
・利点
粉じん対策されている製品もある。
商業用途の製品が多い為、作りがしっかりしている。
 
・欠点
吸入以外にも排出が目的な製品もあるので排出口が四角などの場合もある。
設置方法が床置きタイプが多く、設置しづらい。
音量が結構大きい。
一般家庭向けではないので、全体的に価格が高め。
塗装ブースで使われている例がほぼない。(私は見つけられませんでした。)
 
 
排気装置を選ぶ際のポイント
 
1. 予算があるのであれば、できるだけ風量(m³/h)がある物を選ぶ。
(正確には風圧(Pa)も見なければなりませんが、後で記載します。)
 
2. ブースサイズに収まるサイズを選ぶ。
思っていたブースサイズに収まらない場合、ブースのサイズ自体を大きくすることも考える。
 
3. ダクトサイズが大きい方を選ぶ。
排気装置につけるダクトは、アルミダクトのφ100、φ150が一般的です。
ちななみに「φ100の2本」より「φ150の1本」のほうが効率的です。
 
4. ファンの素材を踏まえる。
ファンの素材がABS樹脂などの場合、溶剤で溶ける恐れがあります。なるべく避けましょう。
(私の経験談ですが台所換気扇の整流板がABS樹脂で通常使用していましたが数年で油と熱の影響で溶けました。)
 
5. 天井取付型・ダクトファン・壁取付型 or PCファンの順番で考える。
先の利点・欠点を踏まえた順序です。
 
 
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