排気装置の選定基準 2
 
話が考察など含んでいたため、長くなってしまいましたので
これまでで得た情報をまとめたいと思います。
 
1. 圧力損失[Pa]の考え方
 
計算すると以下の条件が当てはまることが判ります。
 
「ダクトによる圧力損失 > フィルターによる圧力損失 > ブース内圧力損失」
 
この事から対策する順番も上記と同じになるという事が判ります。
 
さらにこの事を頭にいれて排気装置を見ると面白い事が判ります。
 
・壁取付型(プロペラファン)
壁を挟んで吸排気する事が目的なので「ダクトによる圧力損失」を考えなくてよい。
よって高性能にする必要性が無い。
 
・天井取付型(シロッコファン)
「ダクトによる圧力損失」を考えなくてはならないので高性能にする必要がある。
幸い天井スペースがあるのである程度の奥行の大型化ができるシロッコファンが選ばれている。
また天井スペースで響いてしまう可能性からも清音化が見込めるシロッコファンが選ばれているともいえる。
 
・ダクトファン(プロペラファン)
「ダクトによる圧力損失」があるので高性能にしたいがスペースが確保できない。
その為モータを高性能にしてプロペラファンの回転数を上げる事で対応。
しかし騒音に関しては増大してしまう。
 
以上の事が考えだされます。
排気装置の特徴だけ見ると
・ブースには「天井取付型」
・ダクト中間には「ダクトファン」
・外気排気用には「壁取付型」
と考えたくなりますが、
塗装ブースで求められる製品性能で考えると
・ブースには「天井取付型」または「ダクトファン」
・ダクト中間には「ダクトファン」※取付の状態を考えなければ「天井取付型」も有り
・外気排気用には「ダクトファン」※吸引口のサイズを変更しないでブースに繋いでいる場合「天井取付型」も有り
という関係性になります。
 
 
2. ブース能力に見合った排気装置の選び方
 
まずはどこに設置するかで排気装置のおおまかな種類を絞り込むことができます。
次に考えるのは「排気装置の性能」です。
これはこのHPでの趣旨である「排気装置の性能が適正値(ネロブースと比較)として、どの位置に当たるのか?」の答えとなります。
 
はじめに「排気装置の選定基準 2」の「圧力損失計算」を行います。
ページを開くとデフォルトの値として「ネロブース」の情報で計算された結果が表示されていますので、この値を例として使用します。
 
まず一度自分が作ろうとしている(作った)塗装ブースの情報を入力して「計算結果更新」ボタンを押下します。
計算結果の1回目に注目する項目は1箇所「排気風量基準(0.4m/s)」のみ
例としている「ネロブース」での「354.26m³/h」という値に1.15~1.2倍か50m³/h程度足した値「約400m³/h」で排気装置を選びます。
この場合「三菱電機 BFS-40SG」が「風量:400m³/h」なので条件にちょうど当てはまります。
ここから先は「約400m³/h」が妥当かの話がメインになりますので、
めんどくさい方は「排気風量基準(0.4m/s)」を1.15~1.2倍か50m³/h程度足した値以上の排気装置を選ばれれば大丈夫と覚えて下さい。
 
 
次に対象となる排気装置の「静圧-風量特性曲線図」を手に入れます。
ここからはどうしても自動化できないので解説が長くなりますがご了承ください。
 
図a. 「三菱電機 BFS-40SG」の「静圧-風量特性曲線図」1

まず紫色で塗りつぶされたエリアがこの排気装置の性能となります
 
ここで先の計算結果にある「風量」と「圧力損失(+20%)~圧力損失(+80%)」の値が必要となります。
全部書くと大変なので「風量 355.00m³/h」の時「圧力損失(+20%) 19.68Pa」と「圧力損失(+80%) 29.52Pa」の位置に印をつけます。
 
図b. 「三菱電機 BFS-40SG」の「静圧-風量特性曲線図」2

 
さらに「風量 355.00m³/h」の時「圧力損失(+80%) 29.52Pa」の位置に合うように紫のエリアを縦横均等に縮小して書き入れます。
 
図c. 「三菱電機 BFS-40SG」の「静圧-風量特性曲線図」3

 
結果残った紫のエリアが「塗装ブースで使われた際の排気装置の性能」となります。
ただこれだけ見ても「?」となる方もいると思いますので詳しく解説しますと
 
図d. 「三菱電機 BFS-40SG」の「静圧-風量特性曲線図」4

余計な部分を整理して、車などにみられる「メータ」のイメージで書き直しました。
実際排気装置が動いている場合、大体3分割した中央の「紫の濃いエリア」で赤い針が震えているとイメージしてみて下さい。
さらに正確にいうと、赤い針の上で点が上下に震えている状態です。
なぜ一定ではないかというと、排気装置を使う際の条件(人や物が少しでも動く等)が激しく変化する為です。
 
通常でしたら赤い針は「紫の濃いエリア」で収まっていまが、
部屋で吸気口なしで使い続けると赤い針は右下の「紫の薄いエリア」に入ります。
さらに使うと赤い針は水平状態(0Pa)となって吸引する事ができなくなります。
 
まずこの針の赤い部分が「排気装置のゆとり」で長いほど「性能的に余裕がある」といえます。
さらに「紫の濃いエリア」が広いほど「性能的に余裕がある」ともいえます。
 
今回の例ですと赤い針を見てみると大体「静圧 100~120Pa」で「風量 250~300m³/h」となり、
120Pa - 100Pa = 20Pa
(300m³/h - 250m³/h) / 2 + 250m³/h = 275m³/h
「風量 275m³/h」時の「余剰風圧 20Pa」が求まります。
 
 
今度は先の「排気風量基準(0.4m/s)」時の値「354.26m³/h」での余剰風圧を調べます。
 
図e. 「三菱電機 BFS-40SG」の「静圧-風量特性曲線図」5

 
赤い針の真ん中が大体「354.26m³/h」になるように移動しました。
今回の例で赤い針を見てみると大体「静圧 60~75Pa」で「風量 325~375m³/h」となり、
75Pa - 60Pa = 15Pa
(375m³/h - 325m³/h) / 2 + 325m³/h = 350m³/h
「風量 350m³/h」時の「余剰風圧 15Pa」が求まります。
若干「濃い紫のエリア」からはみ出していますが、「余剰風圧」が残っているので問題ないかと思います。
 
 
今回自動計算される「排気風量基準(0.4m/s)」の値は少し多めに計算されるようになっていますが、
「ネロブース」で調べると「ギリギリOK」といった値です。
つまり自動計算される「排気風量基準(0.4m/s)」を超えた時点で「ネロブースと同等」、
「排気風量基準(0.5m/s)」で「ネロブース以上」と考える事ができます。
また逆に「ネロブースで排気ダクトを長くすると評判のような性能にならない。」ともいえます。
 
 
以上の事から「排気装置の性能が適正値(ネロブースと比較)として、どの位置に当たるのか?」が判るようになったといえます。
 
 
それでは結果として私が出した答えとは?
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